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再会
「李音元気だった?」
俺は平静を保って目の前で柔和な笑みを浮かべる彼を見つめた。
カフェの窓から差し込む光が白い肌を照らしている。
ぱっと見、美少女にも見える李音は、数年のブランクや、あのいざこざを感じさせない口ぶりで応じた。
「うん、有斗は?」
「まぁ、元気」
俺と李音は高校時代の頃、同じ合唱部だった。
男声合唱部は人数が少なくて、必然的に話す機会も多く、李音とは親友と呼べる仲であった。──そう、あの時までは。
「有斗ごめんね。あの時は……」
「大丈夫」
彼の長い睫毛がチリチリと揺れた。
頭を振ったとき、お待たせしました、とウエイターさんがアイスココアとコーヒーを運んできた。
李音は目を細めて美味しそうにココアを啜る。
「有斗、コーヒー飲めるんだ」
「あぁ」
ミルクを少し入れ濁ったコーヒーを啜った。
苦味とほのかな甘さは失恋を思い出させる。絶対、李音といるからだ。
「有斗すごいじゃん。ヤマダ楽器店に就職したなんて」
「なんとか、な。お前こそすごいな。ソナレコだって?」
そう、俺はそこそこ有名な楽器店に今年就職した。
半年ほど経つが、お客さんと話したり楽器の管理はまだ緊張する。
そして、李音が勤めているソナレコとはソナーレコーズという有名なレコード会社だ。
国内のCDの売り上げの大半はソナレコで、誰もが憧れる有名企業である。
「まだまだ下っ端だけどね……実力じゃないし」
小さく笑って李音はストローから口を離した。
彼の父、堀田志音は有名なサックス奏者で、姉の美音はmioと言う有名歌手だ。
それに加え、母はピアノ講師に妹は管弦楽部の部長という、音楽一家である。
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