第八章 悲劇は突然~独白

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 震災の日、北海道も揺れましたが、こちらは震度3程度でした。ところがテレビの画面を見ると、ものすごく大きな津波が見慣れた街を呑み込んで行くのが見えました。  あわてて未来にメールすると、大丈夫、家にいる。と返事が返ってきました。しかし映像は仙台の街を飲み込む津波を映し出していました。あわてて未来に電話しましたが通じず「逃げて!」と何度もメールしましたが、返事は返って来ませんでした。  そのまま夜になり、優一さんが帰って来ました。彼も重い顔を浮かべています。無言でテーブルの上にケータイを置いて、画面を指差すので見てみると、 『波がそこまで来てる。私も貴方が好きだった。ゆうりと幸せに』  私と優一さんは、泣きそうになりました。未来は自分の気持ちを抑えて、必死に私たちを応援してくれていたのです。その時、私のケータイにメールが入りました。 『あなたとの日々、楽しかった。私は多分助かりません。優一さんを大切にしてね。泣かせたら、化けて出るから』  回線の混乱か、4時間以上遅れて到着したそのメールを見て、私たちはその場に崩れてしまいました。  でも、まだ死んだと決まった訳じゃない。ふるさとがある程度落ちつくのを待って、仙台に行きました。しかし未来は行方不明とのことでした。  しかし、その後何度か仙台に行ったり、連絡を待ちましたが、彼女が見つかることはありませんでした。
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