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第一章 取材
「宮城の物は親戚に頼まれたから置いてるだけよ。特別な理由なんて無いわ」
中央恵庭高校新聞部、西崎みはるの取材に、30歳手前に見えるクールビューティな店員さんは素っ気なく答えた。
「でも、冷蔵庫も使ってけっこうなスペースを使っていますよね。やっぱり何か特別な理由があるんじゃないかと思うのですが」
「んー……、そんなんじゃないですよ」
みはるはさらに突っ込んでみたが、彼女はさらりと流そうとしていた。
学校新聞に特ダネが必要な訳では無いが、生徒に読んでもらうためにはコラム的な話も必要なので、生徒がよく利用する小さな個人商店に取材するために来ていた。
つつじ商店――中央恵庭高校の最寄り駅、戸磯庭園駅の前にある、今どき珍しい駅前商店。以前は優しそうな50歳ぐらいのおばさんが店主で、2008年頃に閉店したが、2011年2月頃に今の店長が来て再開した。
現在の店主は店の名の通りに燃え立つような美しさを持った三十路ぐらいのお姉さん……、通称「つつじさん」一人で切り盛りしている。先代店長の従姉妹らしい。
その一角に、宮城名物を集めたコーナーがある。
小さい割にはなかなか本格的で、牛タン、笹かまぼこ、ずんだもちなどの定番ものに加えて、生なす漬けや牛タンラー油と言った一風変わったものまで一揃いしている。
そのため、宮城でおみやげを買い忘れたサラリーマンなどが空港帰りに寄ることもあるほどである。
ここは公式のアンテナショップではないが、イベントでは無く常設されているので、店に通う生徒たちの間でも謎とされてきた。
その謎を記事にしようと、新聞部の面々が『つつじさん』に取材しに来ていたのだが、軽くはぐらかされていた。
(いや、これは絶対何かあるわね……)
西崎みはるは鋭い目つきでつつじさんを見ていた。彼女もそれに気づいてか、うっすらと作り笑いを浮かべている。
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