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第二章 不穏な空気
取材しながら、みはるはあることに気がついた。
この店が再開したのは2011年2月のこと、その翌月に未曾有の大災害が起こった。
――東日本大震災
最大震度7の大地震の後、大津波が甚大な被害をもたらし、東北を中心とした広範囲にわたって多大な犠牲を出したあの地震。
みはるはこの時まだ幼稚園児だったので、テレビのニュースで連日報道されていたことしか記憶に無いが、地震と大津波の前になすすべも無く、雑草さえ根こそぎ持って行かれた街並み、避難所に身を寄せ、絶望に打ちひしがれた被災者の姿はよく覚えている。
これは!? と思ったみはるは、
「もしかして、東日本大震災と何か関係があるのですか?」
と、ド直球な質問をぶつけてみた、するとつつじさんは作り笑いを浮かべて、
「いえ、それとは全く関係ありませんよ」
と、はぐらかすように答えた。
「関係なくないんじゃないですか?」
「いえ、そんなこと無いわ」
こんな調子で話は堂々巡りをはじめた。そしてついに、
「ごめん、もう話したくないの。帰ってくれる?」
つつじさんは口調を変え、突き放すように言ってきた。
だが、みはるは、
「そういう訳には行きません。私たちにも出来ることがあると思います」
「きれい事、言わないでくれる?」
「きれい事だなんて、そんなつもりは……」
「とにかく話したくないの。帰ってちょうだい!」
いつもはすましているつつじさんが、急に冷たくなり、さらにものすごい剣幕で突っかかってきた。
「わかりました。今日のところは帰ります。ですが、明日もまた来ますから」
「……、勝手にしてちょうだい」
こうして新聞部の三人は、ちょっと気まずい雰囲気の中、つつじ商店を後にした。
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