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第四章 私と図書館のお姉さん
その次の日の夕方のこと。
「あの、お手伝い出来ること無いですか?」
「そんなの特に無いわ」
「でも、何かお役に」
「バイトで雇った訳じゃないんだから、ヒマなら本でも読んでなさい」
みはるは仕方なく本棚を見る。小さな棚があり、ここにも宮城県ゆかりの作家の本がある。
そこに、ラフな格好の30歳ぐらいの小太りの男の人が現れた。手にはダンボールをいくつか載せた台車がある。
「いつもありがとうございます。こちらが配本です。在庫切れになっていた本、やっと入りましたのでいれてあります。こちらの箱は注文分です」
「いつもありがとう。じゃあ、これが返本ね」
「かしこまりました。それじゃあ」
そう言うと男の人は去っていった。どうやら出版取次の人のようだ。
つつじさんはダンボール箱を開けて、中身を本棚に入れようとする。
「ごめんね、ちょっとどいてくれる? 本を入れるから」
彼女が本棚に手際よく本を入れていく。そこに『私と図書館のお姉さん』が入っていることをみはるは見逃さ無かった。
「ああっ! その本! 私の好きな本なんですっ!」
「あ、ありがとう……」
さっきまでつっけんどんだったつつじさんの態度が少し変わった。どこが嬉しそうな感じを受ける。つかんだ紐を逃すかとばかりにみはるが続ける。
「つつじさんも、この本のファンなんですか?」
「あ、まあ……」
「面白いですよね。主人公が教えられるばかりじゃなくて、告白の後押しをするところとか最高で、その時のお姉さんが可愛くて!」
「うん……」
「それから……」
しばらくみはるのマシンガントークが続いた。つつじさんはなんだか様子が違ってきた。そして、
「西崎みはるさん、私にファンレターをくれたよね……、思い出した」
「ええっ……!?」
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