42人が本棚に入れています
本棚に追加
/12ページ
第六章 書けない理由
「続きが書けないのはね、主人公のモデルになってくれた人がね、亡くなってしまったからなの」
つつじさんは、少し寂しそうに言いました。
「主人公、モデルさんがいたんですね。でも、亡くなられていたんですか……」
「うん……、未来ちゃんって言ってね、ちょっとおとなしいけど優しい娘でね、よく一緒に遊んでいたわ」
みはるは小説の内容を思い出す。主人公はもっと活発に動く娘だったはず。そのことをつつじさんに聞いてみた。
「確かに、ちょっと違うわね。でも私は、未来ちゃんに主人公になって欲しかったのよ。そうするにあたって、積極的に動くように変えた部分もあるわ。でも未来ちゃんじゃないと、この話は成り立たなかったの」
つつじさんの答えに、みはるは、
「なるほど。でもキャラクターを変えているなら、未来さんじゃなくてもいいような気もしますが……、供養のためですか?」
これを聞いたつつじさんは少しムッとした。
「あなたって本当に物言いがストレートね」
「あ、すみません……」
すると少し笑みを浮かべて、
「いいのよ、供養のためって訳じゃないし、誰かにお話したいと思ってたから。それはね……」
つつじさんは、未来さんの思い出話を始めました。
最初のコメントを投稿しよう!