第八章 悲劇は突然~独白

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第八章 悲劇は突然~独白

 しかし、2010年4月、優一さんと一緒に北海道に渡った頃から、未来との空気が微妙になりました。  お店の収益だけでは厳しいので、私は作家をしながら店番、優一さんは札幌で仕事をすることになりました。  その頃から、未来がオンラインゲームに急にログインしなくなって来ました。理由を聞いたら「大学が忙しいから」って言うだけで、それ以上話そうとはしませんでした。  私は、何か引っかかるものを感じました。ちょうどその頃、去年佳作に入った児童文学に出版の話が入りました。  そこで、ラストシーンは未来が私を後押ししてくれたことをリスペクトして、主人公の後押しで、司書さんとあこがれの小説家さんが恋仲になるシーンを追加することにしたのです。  本の出版は12月になりました。そのことを未来にメールすると「おめでとう」と返信が来たので、私はラストシーンの話をしたのですが、彼女からは素っ気無く「ありがとう」と返事が返ってくるだけでした。  やっぱり何かある。優一さんに相談した結果、今年の年末年始は忙しいけど、来年のゴールデンウィークにまとまった休みがとれそうだから、そこで3人で話をしようと言うことになりました。籍を入れるのは、早くてもそれからと心に決めて。けれど……、あの震災の日を迎えてしまいました。
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