始まりの

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だが静かな夜ばかりではない。 大雨や風の強い夜は物音で目を覚ます。 母の店もいつも同じではない、忙しい日は私の様子を見る為の帰宅が困難な夜もある。 たまたまそれが重なる夜は私には恐ろしい夜となる。 窓の外には雷のもの凄い轟と閃光、一瞬の光に写し出される風に揺れる木々の影はまるで化け物のように私に襲い掛かる気がした。 布団に頭から潜りそれが通り過ぎるのを待ちながら父や母を呼ぶ。 でもその声は聞き届けられる事はないのだ。 その夜はまさにそんな夜だった。夕方は何時も通に静かで、空には綺麗な三日月と星が輝いていた。夜半凄い物音で目を覚ますと、辺りは一変していた。 強い風と窓を叩く雨、そして私は、多分初めての現実逃避をしたのだと思う。 怖い夜、眠れない夜、夜中に目覚めた時.. 私は私にしか聞こえない声を聴いた。 (どうしたの? こわいの?) 最初は驚いて身を縮めていたが、時期にその声が一人夜の恐怖を和らげてくれているのを感じる。 そしてある夜、私はその声に返事を返した。 「あなたは誰? どうして僕に話かけるの?」 (どうしてって.. 君が寂しそうに見えたから) 声の主は優しく話しかける。その夜から私に怖い夜は無くなっていった。 母が仕事に出ると布団を抜け出して窓際に背を向けて座る。 窓からのの月明りを畳に写して私と『友人』との時間を楽しんだ。
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