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「クルロヴァ、見て」
レイナは細い腕を上げ、土壁の上部に穿たれた小さな窓を指差した。
「月があんなに輝いてる。明日はきっときれいに晴れて、羽化した花嫁たちが一斉に飛び立つでしょうね。でも私、ひとりでひっそりと羽をもいで、死のうと思うの」
「こんなに、きれいな羽なのに?」
「きれいだと思うなら、今夜のうちによく見て。ねぇ、クルロヴァ。今日は朝まで、一緒にいて」
翅が生えた花嫁候補は、準備のために個室を与えられている。他のきょうだいたちと広間で寝起きしていた頃のように、あたしたちは抱き合って横になった。
窓から見えた月は西に傾き、今は部屋の片隅を白く浮かび上がらせている。
あたしは隣で寝息を立てるレイナの翅をつまみ、そっと持ち上げた。月の光に透けて輝く、虹色の翅。あたしの背中に生えた琥珀色の翅より、ずっときれいだ。たくさんの花嫁の中でも、ひときわ目を惹くだろう。
この翅で、夜が明けたらレイナは大空に飛び立ち、花婿たちとダンスを……
自分も同じ目にあうんだ。それは身の毛もよだつ恐怖だけど、レイナが男たちに蹂躙される方が何倍も耐え難い。
あたしたちはずっとこのコロニーで、穏やかに暮らせると思っていたのに……
これが運命なんだと、いつか諦められるんだろうか。涙で視界が滲む。レイナが目を覚ましたらと思い、あたしは妹に背を向けた。
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