0人が本棚に入れています
本棚に追加
紙の本
「何これ…おもろっ」
図書室の窓から夏の厳しい日差しが差し込む。
昼休みが終わりのチャイムがなるがその本を手に取る、優希はその場から動こうとしない。
「おーい」
「あぁ?」
「あぁ?じゃ無いでしょ。またサボり??」
と、幼なじみの春は椅子を引いて優希の隣に座った。
「うっさい。あんな煩くてイライラする教室なんて行きたくねーの」
不服そうに頬ずえを付きながら答える。黒く長い髪で壁を作り、春とは反対方向を向いた。
春もそれに負けじと優希の顔が見える方へ席を移した。
「まーたそういう風に言う。まぁ…煩いのは否定できないけど女の子なんだから汚い言葉使わない!」
「うるせぇな…もう……」
優希と春は家が近所のごくごく普通の幼なじみ。同じ高校に進んだ2人だったがその性格は真逆と言っていい。人と関わるのが苦手で1人が好きな優希。他の男子と比べて物腰柔らかでかなり面倒見がいい春。
何故この2人が幼なじみとしてやっていられるのか周りの人間達は不思議でたまらない。
「ていうかさぁ…それどうしたの?」
「あ、これ?なんか端っこに置いてあったから勝手に拝借した」
優希はしょっちゅう図書室に入り浸っているせいか図書委員や先生達よりもここを熟知している。
分厚く何百ページにも及ぶその本は、随分前のものなのだろう。紙が茶色く焼けている。
「勝手に持ち出して~…って言いたいとこだけど…紙の本だよね!それ!今どき珍しい!」
「だろ?!春も読むか??」
「読む読む!!!」
最初のコメントを投稿しよう!