紙の本

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「はぁ?なんだよ、詐欺じゃねーか」 優希がイライラとした口調で答える。優希から本を借りて春がページをめくるがめくってもめくってもそこには何も書いていなかった。 まるで最初から何も無かったみたいだ。 「何も書いてない…」 「くっそ…、せっかく面白い本だと思ったんだけどなぁ」 「まぁまぁ。この作者の名前検索すれば電子書籍で続き読めるかもよ?」 「え~~…紙だからいいんだろ?」 「わがまま言わないの」 まるで母と小さい子供を諭すように春は優希を諭した。春は自分の携帯を取り出し、本の表紙に書いてあった名前を検索する。 しかし、その名前でヒットする書籍は1件も無かった。 「あれ~?…無いな」 「絶版とかなんじゃねーの?」 「そうなのかな…。なんか気になってきた。ネットで検索してみよっ」 春はその作者の名前を慣れた手つきで携帯に打ち込んだ 「どういうこと?…」 「どしたー?」 「検索にヒットしないんだよ」 「はぁ?いやいや。んなわけ。あたしもやって見るわ」 その作者の情報は一切出てくることは無かった。優希も自分の携帯に検索を掛けるがその作者の名前はヒットしない。 「何もんなの…?こいつ。今の時代にヒットしないなんて有り得る?せめて学歴とか生まれた時ぐらいはわかるでしょ」 「確かに…。ちょっと不思議だね…。ハルさんに聞いてみようか」 「ハルさん…。えぇあそこ行くのかよ…」 優希があからさまに嫌そうな表情を浮かべる。春はその反応に慣れっこなのかその反応を気にする事は無かった。 「それじゃ、放課後。学校終わったら’’あそこ’’な」
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