紙の本

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「これ、ハルさんなら知ってるかなと思って」 優希が鞄からあの本を取り出した。ハルはそれを手にすると小さく目を見開いてページを 何枚かめくった。 何枚かめくるとそれを愛おしそうに見つめた。 「よく残ってたね……。また会えた。」 「ハルさん??」 春が彼女の名前を呼ぶと彼女は小さく笑って、家の中へ入るように促した。家の中に入ると2人には見慣れた木材を基調とした玄関と季節の花が迎えてくれる。 「お、今日はゴテチアか」 白い花瓶に1輪の穏やかな桜色の花が優雅に存在し、その空間を彩っている。 「さすが花屋の息子だね。よく知ってる」 ハルが笑いかけると春は照れたように当たり前だよと手を頭の後ろに置いた。 「デレデレするな。バーカ」 「いった!」 と、優希は春の頭を軽く叩いて先に家の中に入っていった。 僕、なんか悪ことした?? 叩かれた頭を自分で撫で、春も家の中へと足を踏み入れた。
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