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わたしのうまれた日
わたしにとって特別な日
世界にとってはなんでもなくても
みんなにとってはなんでもなくても
わたしのうまれた日
厳密にそれは24年前の今日だけど
生と死の境目、生の継続、
24歳のわたしが初めて迎える特別な日
わたしのうまれた日
わたしにとって特別な日
みんな、ケーキ持って祝ってくれなきゃいやだよ
「お誕生日おめでとう」の言葉をちょうだい
わたしのうまれた日
それはわたしにとっては特別だけど、
世界にとってはそうじゃないみたい
太陽がわたしを憎んでいた
店員さんが優しくなかった
おばさんは今日も自分勝手
ママは今日も怒ってる
パパはお仕事に出てるの
わたしのうまれた日
わたしがこの世界の住人になった特別な日
わたしが初めて見た世界、聞いた世界
それはとても恐ろしくて、素敵で、
そうして初めて声をあげて泣いたの
わたしのうまれた日
それは何度も繰り返されるたびに
摩耗し、消費され、何が特別なのかわからなくなった
参加者不在のパーティ、
主催者ひとり、回るお寿司で祝うの
ジンの香りと、深い味が慰めてくれる
ねえ聞いてよ、今日は私の誕生日なのよ
24年前の今日、わたしを産んだママも
何も言わない、何も知らない
わたしがこの日をこんなにも大切にしてるのは
あなたと初めて会った日だからなのよ
あなたがずっと守ってくれてたって証明だから
わたしのうまれた日
「はじめまして」を言うのはわたし?
それとも世界?
どっちだっていいから瞳を合わせて言葉を交わしてよ
知らない顔なんてしないでさ、
今日は何の日?
そんなの知らない、考えない
スケジュール帳は真っ白
期待は何年も前の今日においてきたの
私の“生”を肯定して
“私”を認めて
“私”を愛して
もう何も期待しない
この世界に招待してくれたのは
パパとママだけど、
わたしはもうひとりでこの世界を生きるわ
わたしは“私”になるの
私が“私”を肯定し、認め、愛するの
今日は私が生まれた日
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