1 ピラミッドの頂点

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こちらに向かってそれはもう満面の笑みで手を振っている人物がひとり。 生徒会書記 麻生千影(アソウ チカゲ)である。 高身長で体格のいい彼は、本人が無口であることも相まって 一見すると武士のような印象を受ける。 しかし、その実態は真逆だ。 アリゲーター種なので水浴びが好きで、頻繁に水浴びしている姿を見かける。 そして水浴び中やその後は大体満面の笑みで周囲に幸せそうな雰囲気を振り撒いている。 その様子は大変可愛らしく、彼のファン曰く普段の無口な様子とのギャップが堪らないとのことだ。 今彼はその、可愛らしいと評判の表情を自分に向けているのである。 ここで疑問が湧く。 彼が手を振っている相手は本当に自分だろうか、と。 去年から書記をしていた先輩なので名前は知っているが、それくらいだ。 きっと彼は自分の周囲の誰かに向かって手を振っているのだろう。 そう考えて1人で納得すると会場にアナウンスが響く。 「続いては、委員会紹介です。 風紀委員会の方々は舞台上に御並びください。 」 聞こえてきたアナウンスに反応して、ぞろぞろと動き出した周囲の列に着いていく。 自分が参加する必要はないだろう、などと今更考えながら舞台に上がり 風紀委員長を左端にして並んでいる列に加わった。
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