第1章:名探偵と美少女と召使い

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  真凛亜ちゃんのおかげで無事大通りに戻れたオレは、その足で探偵事務所に向かった。 「やあ、そろそろ戻ってくる頃なんじゃないかなと思っていたよ。・・召使いくん」 「探偵…っ」 もちろん探偵自身が先に戻って来ているという保証はなかった。 けど、探偵はまさに待っていたと言わんばかりで部屋の奥にある一人用の肘掛け椅子に座っていた。 そして、その椅子の真横にはサイドテーブルもあった。 そのテーブルには真凛亜ちゃんにも出したあのティーセットが置いてある。 …優雅にお茶でも飲みながらオレを待っていたと、探偵はそう言いたいのだろうか。 でも、余裕でいられるのも今のうちだ。 真凛亜ちゃんのためにも、確かめなきゃいけないんだ。 「アンタ…本当は全部、知っていたんじゃないですか?」 「・・・何が言いたいのかな。」 「真凛亜ちゃんのことですよ。本当は、何もかも知っていた上で依頼を引き受けたんですよね?」 「ッ!へぇ…」 オレがそう言うと、探偵は一瞬だけ驚いた素振りを見せた。 すると、手に持っていたカップをサイドテーブルに置いて、そのままゆっくりとオレに近づいてきた。 じりじりと縮む距離に怯みそうになるも、オレは負けじと言葉を続ける。 「…否定、しないんですか」 探偵はニヤッと笑うだけ。 ああ、そうか。 思えば始めからおかしかった。 …真凛亜ちゃんが依頼に来る時点で、違和感を覚えるべきだったんだ。 「・・それで、召使いくんは私にどう答えて欲しいのかな?」 「オレは答えなんて求めていません。ただ、真凛亜ちゃんには本当のことを話してあげてください」 「・・・キミは聞かないのか」 「…元々オレは部外者です。それにオレの聞きたいことはもう聞きました。それ以上は聞く権利なんてありませんよ」 「変わってるね。普通ここまで色々と感づいていれば、問い詰めてでも無理にでも聞き出そうとするだろうに」 「・・・・・誰にだって、触れて欲しくないことくらいあるでしょう」 …オレにだって、それはある。 だからこそ、分かってしまう。 「…そう。召使いくんは随分と聞き分けが良いんだね。」 「・・・いけませんか」 「いや、否定するつもりはないよ。・・ただ、生憎だけど私はそうじゃないんだ」 「・・どういう意味ですか?」 「ほら、召使いくんはまだ私に本当のことを話してくれてないだろう?」 「…はい?」 探偵の言いたいことが良く分からない。 何故このタイミングで、オレの話になるのか…理解が追いつかなかった。 「実はね、ちょっと興味あるんだよ。召使いくんが今日初めて会った女の子に対して、何でそこまで感情的になれるのかなって」 「!あんた、まさか…ッ」 「真凛亜ちゃんためなら、喜んで教えてくれるよね?召使いくん」 「ほんと…最低、ですね……っ」 笑顔の奥にある黒い思惑に、オレはただただ言いなりになるしかなかった。 これも全て探偵の読み通りというなら、この人は本当に本物かもしれないと、そう思わずにはいられなかった。
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