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探偵とオレはテーブルを間に挟んで、互いに向かい合った状態でソファに座った。
そのテーブルには真凛亜ちゃんにも出した可愛らしい小花柄のポットとカップが置いてあった。
「あ、お茶…飲みますか?」
「…淹れてくれるのかい?」
「・・・まあ飲みたいというなら、お出ししますけど」
「そう?じゃあ、お願いしようかな」
近くにあった茶葉を継ぎ足してポットに淹れた後、そのままカップに注ぐ。
…まさか、またこんな風に探偵にお茶を出すことになるなんて思わなかった。
「すっかり召使いとして様になってきたんじゃない?」
「なっ…!別に様になんてなっていませんよ!あくまでこれは話を聞くためであって、仕方なくですっ!」
「ふ、そういうことにしておくよ」
「…調子良すぎですよ、全く…っ」
すっかり立場逆転というか、さっきまでの緊迫感が嘘みたいだ。
探偵はどことなく楽しそうだし…この人は本当に話す気があるのか?
信じると言った手前、ひくに引けないのがもどかしく感じる。
「さて、じゃあ…何から話そうかな。」
「いやそれ…悩んでる場合ですか?しっかりしてくださいよ」
「まあまあ、せっかくなんだし召使いくんも飲んだら?」
「…言われなくても飲みますよ。自分で淹れたんですから」
探偵にそそのかされ、一口だけお茶を飲む。
なんだか拍子抜けだ。
気が抜けてしまいそうになる。
「お茶、美味しい?」
「ええまぁ…美味しいですよ」
「なら良かった。キミはあの時飲んでなかったから、せっかくだしキミにも飲んでもらいたかったんだよ」
「はあ…」
何がしたいのだろう。
あれだけ話すと言ったくせに、一向に話が進まない。
ここまで引っ張っておいて、今更話さないなんてことは…さすがにないとは思うんだけど、少しばかり不安になる。
「………ところで、キミはそのポットとカップを見て何か疑問に思わなかった?」
「えっ?」
まさかの質問だった。
思いがけない台詞に少しだけ戸惑う。
「で、どうなの?」
「ど、どうって…別に。ただ意外な趣味だなぁくらいにしか思いませんよ」
「はは、なにそれ。面白いこというね」
探偵の意図が読めない。
お茶の話ばかりで、真凛亜ちゃんの話をしようともしない。
イラッとする気持ちを抑えつつ、オレは言葉を続けた。
「あの、何が言いたいんですか?さっきから露骨に話を逸らしてますよね」
「いや?私は逸らしているつもりはないよ」
「じゃあなんで、さっきからお茶の話ばかりするんですか?こんなの真凛亜ちゃんの話と一切関係ないじゃないですか!」
「・・・関係があるから、話しているんだよ。言わなかったかな?私は無駄なことはしない主義だって」
「は、はあ?あ、あんたほんと何言ってーー」
…可愛らしいピンクの小花柄。
見た目は完全に女の子が好みそうなデザインだ。
けどだからといって、男性が好んで持っていたところで特に疑問に思うだなんて、そんなことーー
「ッ!・・・まさか」
ここでようやくハッと気付く。
けどまさか…そんなことが?
だって、真凛亜ちゃんは…
「いやでも…それだとちょっとおかしくないですか」
「ん?おかしい?」
「だ、だって…あの時の真凛亜ちゃん…明らかに、初めて見たって顔でしたよ?」
そう、それは確かにこの目で見たんだ。
このカップでお茶を出した時、可愛らしいカップですねって…すごく喜んでいた。
…だから、あり得ない…はずなんだ。
オレの想像していることなんて…正しいなんて、絶対に。
「だけど、実際はそうじゃない。なんたって、このポットとカップは元々、真凛亜ちゃんのものなんだから」
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