Chapter1:死にたがりオーディション

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  思わず叫んだ。 ー目が合った、合ってしまった。 恐怖のあまりに身体が、強張る。 「う、うそだ…うそだうそだうそだうそだ…と、父さんと…母さんが…ッ」 ガクガクと身体が震え、恐怖が収まりそうにない。 「兎馬くん…落ち着いて」 「…落ち着いて?何言ってんだよ…ッ!!これも、何もかも、全部終夜くんのせいじゃないかッ!!!」 オレは終夜くんに掴みかかった。 首筋を掴み、そのままベッドに叩き付ける。 「…と…兎馬、くん…っ」 苦しそうにオレの名前を呼ぶ終夜くん。 首を掴むだけならまだしも、オレが馬乗りになって押さえ付けているものだから、より一層に苦しいんだろう。 けど、オレはそこから降りようなんて気はさらさらなかった。 「…びっくりした?まさか、自分より小さいオレからこんなことされるなんて思いもよらなかったよね?」 「なん、で…っ…?僕は、ただ…兎馬くんの、力に…なり、た……っ」 「…力になりたかった?そんなの、オレだって同じなんだよ!!オレなんかと唯一仲良くしてくれた友達だったから…何か悩んでるなら、力になりたいって本気で思っていたんだ!!」 掴んだ首筋に力を入れ、オレはそのまま言葉を続けた。 …オレだって…終夜くんの力になりたかった。 ただ、それだけなのに。 「親友だって言ってくれたことも嬉しかった。オレにとっては、終夜くんが全てだったのに…っ!こんな、こんな形で裏切られて…ッ」 いつのまにか、オレの目には涙が溢れていた。 この涙が、怒りの涙なのか、哀しみの涙なのかは分からない。 「と、うま…くん……っ」 終夜くんが既にもう限界かもしれない。 だけど、手に込めた力が緩むことはなかった。 むしろだんだんと無意識のうちに力が増していく。 あろうことか、このまま殺してしまおうかと…この時のオレは、本気でそう考えていた。 ーそんな時だった。 オレのスマホに一件の着信が入る音が聞こえた。 「で、電話…?」 思わず手が止まる。 何で、このタイミングで電話がかかってくるんだ…? そもそもオレは母さんと父さん以外誰にも連絡先を教えてはいない。 ただ終夜くんだけはあくまで例外として、唯一教えていた相手。 だから、本来なら知らない誰かから電話がかかってくるなんて…絶対にあり得ないはずなんだ。 …じゃあ、この電話は…一体誰からかかって来ているんだ? 鳴り続けるコール音。 ーーコール音は、止みそうになかった。 「で…出た方が、良いと思うよ……」 終夜くんはこんな状態にもかかわらず、冷静にそう言った。 …きっと、終夜くんにはもう電話の相手が誰なのかも分かっていたんだと思う。 実際オレも、そうだった。 仕方なくベッドから降りて、オレはそのまま机に置いてあるスマホを取りに行った。 「…も、もしもし?」 出たくない気持ちを抑えつつ仕方なく、電話に出た。 そして、その電話口の相手は案の定、オレの予想してた相手だった。 「死にたがりオーディション事務局のものです。こちら、月鎖兎馬様のご連絡先でお間違いないでしょうか?」
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