Chapter1:死にたがりオーディション

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  おそるおそる封を開けてみる。 「…これが、オーディション?」 資料の見た目は至って普通だった。 例えていうなら良くある学校案内風の資料。 だけど、その中にも思わず目を引くのが一つだけあった。 それはその資料と一緒入っていたチラシ。 そのチラシは一面、真っ黒。 真っ黒のチラシというだけで、どことなく不気味にさえ見えた。 だけど、それ以上に見出しに大きく書いてある【死にたがりオーディション】という文字がより一層不気味さを際立てていた。 真っ黒な背面に真っ白な印字…。 なんでわざわざこんな凝ったものにしたんだろう? 資料として配るなら、わざわざこんな不気味に作らなくても良いのに…。 「ま、本題はチラシなんかより資料だよね…」 ひとまず、チラシはテーブルに置いてオレは手元にある資料に目を向けた。 資料の厚さは、ほんの数ミリほど。 たしかに見た目は普通だけど、問題は中身だよね…。 …緊張が走る。 「…っ…」 オレはゆっくりと資料の一ページ目を開いた。 「…なに、これ…」 思わずそんな言葉が漏れた。 だって、あまりにも内容が無茶苦茶で、頭の悪いオレなんかじゃ到底理解出来るものではなかった。 「終夜くん…これ…」 「…うん、まぁようは…そういうこと、なんだ…」 虚な目で終夜くんは言う。 「…でも、でも…だからって…こんなのは駄目だよ…!こんな…こんな…死にたい人が応募するオーディションなんて…!」 資料の最初の一ページには、応募資格が記載されていた。 一、このオーディションは現在死にたいと思っている人のみ応募可能。 ニ、性別不同。年齢、15~18歳まで、対象は学生のみ。 三、現在、他オーディションに応募済または応募しようと思っている方は応募不可。 「終夜くんっ…!」 「……ねぇ…兎馬くんは、僕が間違ってるって思う?」 「え…?」 いきなり何言い出すんだよ… こんなの、間違ってるも何もないじゃないか! 大体こんなオーディション、もし合格したらどうなるっていうーー 「ッ!!」 ーここで、ハッと気づく。 …そ、そうだ。 そもそもこれは、オーディションなんだ。 資料の見た目のあまりの普通さにすっかり抜けていたけど…。 ーじゃあ、だとしたら。 このオーディションは…一体、何のオーディションなんだ…? 「……終夜くん。改めて聞くけど…これは、オーディションなんだよね?」 「うん…そうだよ」 「…じゃあもし、これに…この、死にたがりオーディションに合格したらーーー」 「その先には…一体、何があるの…?」 オレがそう尋ねると、終夜くんはふにゃっとした顔で笑った。 …そう、僕がいつも見てる大好きな…その笑顔で、不気味に笑うのだった。
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