おやすみまで3分

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「幽体離脱って、もっとこう魂が抜けてるから、体の状態までリンクしてないと思ってたのに」  私も気が動転しているらしい。自分でも他に言うことがあったのではないかと恥ずかしさが募る。 「そんな甘くないよ、お嬢さん。魂と肉体の結びつきって、それはそれは深いんだよ。だからお嬢さんは見るも無惨……」 私の混乱ぶりとは裏腹に、サンタっぽい男は、潤ませた目に加えて、掌で口を覆い絶望感を煽ってくる。私にはまったく響かない演出であるけれど。 「お嬢さん、肝が据わってるね」 私が思ったリアクションを取らないからか、サンタっぽい男は心底驚いたような顔をしている。これでもかなり内心はアタフタしているので、このリアクションは正直癪に触る。 「まあ、そう機嫌を損ねなさんな。お嬢さん、時間ないんだから」 時間がない。時間がないとはどういうことか。 私が納得いかないのを察したのか、サンタっぽい男は言葉を続けてくれた。 「今、幽体離脱をしているけど、お嬢さんの場合は魂が体から抜けたという方が近い。だから体が死ねば、魂はあの世へ強制連行されるから、お嬢さんがこの世にいられるの、あと3分」 「みじかっ」  唐突に私の残り時間が告げられた。私は脊髄反射の如くこう言ったけれど。こう言うしかなかった。
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