3分でできること

1/4
前へ
/9ページ
次へ

3分でできること

「お嬢さんあと3分。何する?懺悔?」 「そんな悪いことしている人に見えます?私」 「いや際立つ何かを感じないので、ふつー」 「……なんか腹立つな」  サンタっぽい男は、さっきから人の神経を逆撫でしてくる。腹立つんだけど、立つような腹はもうない、というか臓物飛び出てるし、滑稽な感じもするが。なんだか瞼が重く感じる。 「お嬢さんヤバい。瞼が閉じる寸前だよ、それ。早くしないと寝ちゃうよ、永遠に」  永遠に。そう私は3分後死ぬのだ。まあ、もう死んでるけど、ほとんど。3分。3分で何ができるというのか。 「カップラーメンが食べたい」 最初に思い付いたことは、本当にしょうもなかった。 「無理。お嬢さんの臓物が使い物にならないし、カップラーメン出来た瞬間、君死んじゃうし」 全力で真っ当に否定された。もうカップラーメンの味は味わえないのかと思うと、ちょっと辛い。 「スリップさせた車の運転手を殺す」 我ながら倫理観のかけらもないセリフを吐いてしまった。 「無理。お嬢さん、体痛くて動かないじゃない」 忘れてました。私ぺちゃんこでした。復讐する暇もないらしい。 「じゃあ世界平和でも祈る?」 「お嬢さんが祈ったくらいで平和になるなら、もう随分前に平和になってる」 余命幾ばくもない人間に対して無慈悲すぎる。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加