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「は?」
いよいよサンタっぽい男の貞操が崩れてきた。言葉の余裕を少し削ったやった。でもこれは本心だ。
「私ね、それなりの大学出て、それなりの企業に就職して、それなりの結果を出したつもり。でもそれだけなんだよね。これといって死ぬ前に語りたい成果もないし、ぶっちゃけここで死ぬことに対してさして未練もないし。」
思い返しても、私の人生はとにかくそれなりで。失敗もそこそこ、成功もそこそこ。とにかくそこそこな人生のような気がしている。それが一番幸せという人が多くいるだろう。大きな成功はないけど、小さな成功が沢山ある。大きな失敗はないけど、小さな失敗は幾つもある。それをよく思う人からすれば幸せな人生。悪く思う人からすれば、それはひどく退屈な人生だった。
そして私にとって、私の人生の評価は退屈でしかなかった。
でも今は違う。
おおよそ体験しないだろう事故を経験し、人体は破損し、死ぬ間際に3分も幽体離脱して、客観的に私を見ている時間。こんな特別な時間は今だけだ。
「だから今の非日常の3分が最高に楽しい」
私は心の底から笑った。
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