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街はすっかり落ち着きを取り戻し、冬の色に染まっていた。
三百メートル以上あるセントラルタワーからは街を囲む水平線までぐるりと見渡すことができる。天気のいい日は運がいいと他の中央諸島や南の大陸の影を見ることもできる。
中央区は人間と鳥人の共有区域だが公共施設が多いわりに人影は少ない。白く四角い建物で統一されており、街中を歩くには分かりやすくていいが、空から見ると寂しげで閑散として見えた。
人間の住む東地区は中央区の倍以上の敷地があり、模様を描いているかのように樹木や色とりどりの建物が行儀よく並んでいる。それは整頓されたおもちゃ箱のようだ。豆粒のように見える人の数もずっと多く、遠くから眺めていてもそのにぎやかな様子がよく分かった。
一方の鳥人の住居区である西区は中央区の三分の一ほどの広さしかないうえに半分は森だった。その一角に無機質な木造のアパート群が捨てられたように建っているだけだった。店と呼ばれるようなものもなく、アパートの裏手には野菜やハーブを育てている小さな畑があるだけだった。
――絶滅。
今さらになって市長の言葉が気にかかった。
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