3 セントラルタワー

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 とはいえ、親鳥たちに放置される鳥人たちは十三歳になるまで子供たちだけで生きていかなければならない。  人間の赤ん坊と比べれば多少知恵がつくのがはやいようだが、人間たちの文明社会の中ではそれは些細な誤差でしかない。  昔は狩りや森の植物を採取しながら生きていくこともできたが、今では森や自然がへり、そのうえ、人間たちが何とか保護と言って、むやみに狩りや植物を採ることを禁じてしまったために鳥人ができることは減ってしまった。  今、彼らが生活のためにできることといえば、薬草を育てることや羽根や透き通るようなつやをもった美しい髪の毛を売ることぐらいだ。  人間社会が近代化するにつれ、鳥人はますます人間の庇護下でなければ生活できなくなっていた。  その象徴ともいえるのがこのセントラルタワーだった。 「それは、正常と言えるのかな?」  市長はしばらく椅子を揺らして考えこんでいるようだったが、ふとサキを見上げた。背後のまぶしい空の明かりのせいで、市長の姿は半分影になっている。  サキは目を細め、ぼんやりとその丸い姿を視界に入れると、 「大丈夫です」  と言った。  イチイ市長は少し間を置いてから、うなずいた。
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