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「実を言うと、最近、大陸や連合の執行部が鳥人の扱いにうるさいんでね」
市長は愛想のいい顔で言いう。
「北の大陸では、鳥人が戻ってこない地域もあって、絶滅するのではないかとの噂もあるらしいんだ。だから、執行部の連中は君たちのことを希少な存在だと見なしていてね。私は君たち鳥人が人間によって不当な扱いを受けることのないよう注意するように言われているんだよ」
と言ってにっこりと笑う。
人間が信用できない一番の理由は本心が分かりにくいところだった。この笑顔もどれだけが本物なのだろうか、とサキは思った。
「なぜ君が本能に逆らうようなまねをしたのかは分からないが、もしも、何か問題があるなら、遠慮なく相談してくれてかまわないからね。私は君の力になりたいんだ」
市長は絵に描いたような笑顔を浮かべた。
けれどサキは強ばった表情で顔をふせることしかできなかった。
「ありがとうございます」
部屋を出ると、サキはため息をついた。
もしも、何か問題があったとして、それを人間に相談したところでどうなるというのだろうか。
彼は廊下の窓から空を見上げた。
タワーの内部は吹き抜けとなっており、見上げると丸い澄んだ青空が浮かんでいる。
サキはそのまま階段を上がると屋上に出た。
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