3 セントラルタワー

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 上から比べてみると、西区と東区の差は歴然だ。  暮らしているときは気にしたこともないけれど、鳥人の住まいはまるで廃墟のように見える。人間たちもそう思って自分たちに同情するのだろうか?  その昔は、神の化身として鳥人が崇拝されていた時代があったという。その時代、人間たちは競うように鳥人たちに貢物をしていたというが、それが無意味なことだということにどういうタイミングで気がついたのだろう?  鳥人にできることは、本能のままに空を飛ぶことぐらいだ。  それどころか、本物の鳥のほうが上手く生きているようにさえ思う。  むしろ、このような巨大な街や建物をつくってしまう人間のほうがよほど神のようだとサキは思った。  ふと目眩を覚えて彼は目をふせた。  抜け落ちた羽根の山はいつの間にかきれいに掃除されていた。  ときには高価な値段がつくこともある鳥人の羽根だが、自然に抜け落ちた羽根はなぜか時間が経つとあっという間に黄ばんでしまう。  その純白の美しさを保ったまま売るためには、直接翼から引き抜くしかないのだが、その痛みと不快感はいつ思い出しても背筋が震えるほどだ。  それでも、人間たちの作った世界ではお金がないと生きていけない。  だから、我慢をして売らなければならない。  それに、自分たちの羽根が人間の嗜好品として加工されるのもいい気持ちがしなかった。  一度、羽根を買い取ってくれる店主に愚痴を言ってみたところ、人はみんな我慢をして生きていかなくてはいけないものだと言われた。それが便利に生きていくための代償なのだと。  便利。鳥人にとっては何が便利になったのだろう? と思ったが昔の暮らしを知らないのでよく分からなかった。  それなら、南に行ったらどうなるのだろう?
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