3 セントラルタワー

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 エレベーターで二十階まで降りると、ミニシアターが並んでいる。  娯楽用のフィルムではなく、学校のない鳥人のために基礎的な教養を学べるように用意されたものだったが、利用者はあまりいない。  サキの入った教室も人間の初老男性が二人ほどいるだけだった。一番後ろの卵形をした青いビロードが張られたソファに座る。自分の家のベッドよりもはるかに寝心地がいい。  半円上のなめらかな白い壁はプラネタリウムのように直接フィルムを映すことができるようになっており、サキが腰を沈めるのと同時に明かりが消え、上映がはじまった。プログラムを見ていなかったが、どうやら今は「歴史」の時間で、神話物語がはじまるようだった。 『その昔、世界には神様たちが住んでいました。神様は下の世界に人間を、上の世界には鳥人を住まわせました。ところが、ある日、鳥人の誰かが神様のつるつるの頭をバカにしたのです。激怒した神様によって、鳥人たちは雷に打たれて下の世界へと落ちていきました。それ以来、鳥人は人間と暮らすようになり、抜け落ちた羽根は焼かれたように茶色く黒ずんでしまうようになったのです――』  サキは何度も見たことのある神話の話を子守歌にして、いつの間にか眠りについていた。このソファはよく眠れる。これが便利ということなのだろうかと思いながら。  最近、よく見る夢がある。
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