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サキは、そら豆のスープとヨーグルトを食べ、夕食用にサーモンのサンドイッチを包んでもらった。
鳥人は火が苦手なので、自分たちで料理をすることはまずない。鳥人たちの住むアパートには暖炉すらなかった。
「サキ、本当に行かなかったんだ!」
食堂の入り口で鳥人の子供たちに声をかけられた。
まだ十歳にも満たないほどで、瞳はアクアマリンの宝石のように澄み切っていた。瞳の色も白い羽根も幼ければ幼いほどよく澄んだ純粋の色をしている。
子供たちはわーっと甲高い声を上げながら、サキのまわりをぐるぐると回った。
「どけよ」
歩きだそうと右足を出すと、それに一人の子供がつまずいて転んだ。
まだ幼いせいか、身体と翼のバランスをとることが下手で、なかなか立ち上がることができないでいた。
子供はバタバタと手足を動かしている。
それを見下ろすサキの瞳には表情がなかった。
「サキの翼はニワトリの羽根!」
子供たちはそう叫びながら、走り去った。
かっと顔が熱くなった。
全身の産毛が針にでも変わったかのように、細かな痛みが肌を撫でた。胸の中心にある隙間は痛みを覚える余地のないほど深く淀んでいた。
そんな彼の意識がそれを呼んだのか、それともただの不運か。
サキは黒く細い影がエレベーターから出てくる姿を目の当たりにし、顔をしかめた。
しかし、ジールはサキに気がつくと灰色の瞳で見下ろしただけで、何も言わずに通り過ぎていった。
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