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彼らは鳥人の子供たちだ。
十三歳の冬、鳥人は南に向けて旅立っていく。それがなぜなのか、南とはどこなのか、それを人間たちが知ることはない。
鳥人は、生まれたばかりの赤ん坊を南から連れてくると、子供を残してまた南へと去っていく。そして、子供たちは、十三歳の冬になると、誰に教えられることもなく南へと帰っていく。
南の大陸よりもさらに南の水平線へ。その先には未知の大陸があるとも、妖精の国へ続いているとも、あるいは、あの世だとも、様々な憶測がなされているが、それを確かめた人間はまだいない。
空が紫がかった瑠璃色に変わっていた。
真珠色の光が東の水平線からもれはじめると、興奮を抑えることができない子供たちの高鳴りで空気がざわつきはじめていた。
それを待っていたかのように、薄く冷たい氷のような風が忍んでくる。
しかし、真っ赤に染まる頬の痛みを気にする者は誰もいなかった。
――南へ
風の声が耳元をかすめていく。
星は眠りについた。
東の空にオレンジ色の帯がかかる。
それが広がりながら山吹色に変わっていき、光で薄められた空はラベンダー色に染まっていく。
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