4 セナ

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 サキはそんなセナが憧れのようでもあり、正直恥ずかしくもあった。  身体の小さかったサキは大きなセナの背中に隠れるようにして、いつも一緒に遊んでいた。  人間の子供と遊ぶのは嫌だったけれど、セナと一緒ならそんなことを忘れてしまうことも多かった。  鳥人には珍しい、とにかく快活な子供だった。  その日も人間の子供たちがたくさんいたように思う。  サキはまだ扱いきれていない大きな翼を持てあましていて、氷の上で派手に転んでいた。翼があるので痛くはないが、人間の子供たちに大笑いされるのがくやしくて、泣いていた。  結局いつも、セナに手を引いてもらわなければ上手く滑ることができなかった。しばらく一緒に滑り、「もういいだろ」と言われて手を離された瞬間に、転んで尻餅をつく。それもいつものことで、泣きべそをかいたサキをみんなが笑った。  ――ほら。  差し出された手は温かかった。  サキの手はいつも冷たかったので、羨ましかった。  セナは一つしかない翼を器用に動かしてバランスをとっていた。風を味方につけるようにして、誰よりも速く軽やかに氷の上を滑っていく。  それは、空を飛んでいるかのように錯覚することもあったほどだった。
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