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雲のような海霧が波のようにうねりをあげ、粉砂糖をまぶしたように輝きだした。
寒さと興奮で小刻みに震えている鳥人たちの羽音は、もう我慢ができないというように、ささやき声となって地上へと降りていった。
それに追われるように、街の影は逃げていく。
――南へ
子供たちの水晶のような瞳が、夜明けの光をもらすことなく受けとめようと開かれる。
――南へ
北風に背中を押されて、一人、また一人と立ち上がった。
雪毛とも呼ばれるほど白く輝く翼を、ゆっくりと広げていく。
普段は小さくたたまれていることが多いが、めいっぱいに広げると背丈の倍以上はあり、小さくて華奢な身体が生まれ変わるように美しく見えた。
鳥人の子供たちは勢いをつけるように、翼をはためかせる。
その羽根が雪のように地上へと舞っていった。
眼下は霧の雲におおわれて、白い羽根はその中に溶けていく。
さらにその下では、人間たちの灯す明かりが宝石箱をあけたようにきらめいている。それが、今まさに、夜明けの光と交わろうとしている。
羽音のさざ波が大きくなり、風も強さを増していく。
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