1 南へ

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 雲のような海霧が波のようにうねりをあげ、粉砂糖をまぶしたように輝きだした。  寒さと興奮で小刻みに震えている鳥人たちの羽音は、もう我慢ができないというように、ささやき声となって地上へと降りていった。  それに追われるように、街の影は逃げていく。  ――南へ  子供たちの水晶のような瞳が、夜明けの光をもらすことなく受けとめようと開かれる。  ――南へ  北風に背中を押されて、一人、また一人と立ち上がった。  雪毛とも呼ばれるほど白く輝く翼を、ゆっくりと広げていく。  普段は小さくたたまれていることが多いが、めいっぱいに広げると背丈の倍以上はあり、小さくて華奢な身体が生まれ変わるように美しく見えた。  鳥人の子供たちは勢いをつけるように、翼をはためかせる。  その羽根が雪のように地上へと舞っていった。  眼下は霧の雲におおわれて、白い羽根はその中に溶けていく。  さらにその下では、人間たちの灯す明かりが宝石箱をあけたようにきらめいている。それが、今まさに、夜明けの光と交わろうとしている。  羽音のさざ波が大きくなり、風も強さを増していく。
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