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冷たい態度を気にする様子もなく、少年はうれしそうに笑った。その純粋無垢な笑顔に、サキは自分の心の影に住みついてしまった何かを見つけてしまったような嫌な感じがした。
少年を無言で見つめ、サキは立ち去ろうとした。
少年はあわてて立ちはだかると、
「ねえ、僕と友達になって」
とだしぬけに言った。
「は?」
今まで見たこともない奇怪な生き物でも見るように、サキは眉をひそめた。
「ねえ、いいでしょ?」
「嫌だ」
「なんで?」
「嫌だからだ」
サキがぴしゃりと言うと、少年は一瞬驚いた顔を見せたが、
「お願い!」
と言って、サキの身体にしがみついた。
サキはぎょっとして、まずあたりを見回した。
エントランスには人が多く出入りしており、人間も鳥人も怪訝そうな顔でこちらを眺めている。
「ねえ、お願いだから!」
少年はさらに大きな声を出した。
その声に多くの人が驚いて立ち止ると、いっせいに二人に視線をむけた。
「ねえ、僕と――」
「待て! 分かったから、ちょっと、ちょっとこっちへ来い!」
サキはあわてて、少年を引きずるような形で歩き出した。
階段を使って八階まで上がってくると、少年は肩で大きく呼吸をしながらふらふらと座りこんだ。
「なんでエレベーター使わないの?」
「お前が目立つようなことをするからだろ」
サキも呼吸を押さえながら汗を拭った。
「まだ座るな。こっちだ」
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