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サキは無慈悲な視線を投げつけたあと、小さな扉がついた部屋に入った。
正方形の部屋の壁には本棚が並べられているが、どれも古びた本が数冊ならべられているだけだった。隅には段ボール箱が置かれ、錆だらけの道具や古着のようなものが積められている。床には埃と枯れ葉のような羽根が落ちて、掃除すらされていないことが一目瞭然だった。
「ここは?」
少年は部屋に入るなり、好奇心丸出しの瞳で部屋を見回していた。
「物置部屋みたいなものだろ。僕もよく知らないけど、最近は使われてないってことは確かだよ」
「汚いね」
「ここは鳥人の部屋だからな」
「そうなの?」
「たぶん」
少年は古びた本棚を見た。古びて破れかけた布の背表紙には、かすかに「鳥人の暮らし」や「鳥人の歴史」などと手書きで書かれた本が並んでいる。背表紙を見ただけでも相当古い本だということが分かる。
「鳥人の本なんだ? 珍しい」
弾んだ声を上げる少年を、サキは呆れたような奇妙な視線でながめていた。
「読んでもいい?」
「どうせ面白くないぞ」
「なんで?」
「知らないよ」
サキはいらいらとして吐き捨てた。
「それで?」
と興味なさげに言う。
「ねえ、ここに僕がいてもいいの?」
「どうせ誰も来ないし、関係ないだろ。心配なら、さっさと用件をすませて出ていけよ」
とりつく島もないというサキの態度に、さすがの少年もやや苦笑いを浮かべた。
「僕はスバル。僕ね、鳥人に憧れてるんだ」
スバルは明るい声で言った。
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