5 スバル

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 泣き声をおさえこむようにスバルは大声で言った。 「お前はバカだ。わざわざ空を飛びたいと思うなんて」 「どうして? 便利でしょ? 楽しいでしょ?」 「そんなことはない!」  サキは力をこめて言った。  そして、部屋から出ていこうとした。 「ねえ、僕と友達になって、てば」 「まだそんなこと言ってるのか? たとえ鳥人と友達になっても空は飛べないぞ」 「じゃあ、せめて、名前ぐらいは教えてよ」  サキは呆れてため息をついた。 「サキ」  スバルは満面の笑みをみせる。  純粋無垢な鳥人の赤ん坊なら何人も見てきたけれど、無邪気で純粋で、でも愛嬌のあるこんな笑顔は、鳥人の子供にはほとんど見かけないものだった。  サキはそんな珍しさから、スバルの顔をあらためて見つめてしまう。 「サキ、またおしゃべりしてよ。友達じゃなくてもいいから」  スバルが懇願する様子は子犬がじゃれているみたいだった。 「お前さ、僕なんかと話してると学校でいじめられるぞ」 「どうして?」 「人間は鳥人が嫌いだろ?」 「どうして?」 「鳥人は役に立たないし……」 「でも、人間が空を飛ぶ乗り物を作るのは、鳥人に憧れているからでしょ?」  サキは意外な言葉に目を丸くした。スバルの顔には嘘のない素直な表情が浮かんでいた。それを見て思わず苦笑する。 「スバル、そんなこと友達の前で言うんじゃないぞ」 「大丈夫だよ。僕、友達なんていないから」
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