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泣き声をおさえこむようにスバルは大声で言った。
「お前はバカだ。わざわざ空を飛びたいと思うなんて」
「どうして? 便利でしょ? 楽しいでしょ?」
「そんなことはない!」
サキは力をこめて言った。
そして、部屋から出ていこうとした。
「ねえ、僕と友達になって、てば」
「まだそんなこと言ってるのか? たとえ鳥人と友達になっても空は飛べないぞ」
「じゃあ、せめて、名前ぐらいは教えてよ」
サキは呆れてため息をついた。
「サキ」
スバルは満面の笑みをみせる。
純粋無垢な鳥人の赤ん坊なら何人も見てきたけれど、無邪気で純粋で、でも愛嬌のあるこんな笑顔は、鳥人の子供にはほとんど見かけないものだった。
サキはそんな珍しさから、スバルの顔をあらためて見つめてしまう。
「サキ、またおしゃべりしてよ。友達じゃなくてもいいから」
スバルが懇願する様子は子犬がじゃれているみたいだった。
「お前さ、僕なんかと話してると学校でいじめられるぞ」
「どうして?」
「人間は鳥人が嫌いだろ?」
「どうして?」
「鳥人は役に立たないし……」
「でも、人間が空を飛ぶ乗り物を作るのは、鳥人に憧れているからでしょ?」
サキは意外な言葉に目を丸くした。スバルの顔には嘘のない素直な表情が浮かんでいた。それを見て思わず苦笑する。
「スバル、そんなこと友達の前で言うんじゃないぞ」
「大丈夫だよ。僕、友達なんていないから」
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