6 ガラクタ屋

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「羽根ならいつもより高く買ってもいいぞ。今、羽根で作ったショールが北のほうで流行ってるらしくてな。特に、お前さんのような大きくて白い羽根は良い値で売れる。十をすぎてそれほど純白なのは珍しいからな。どうする?」  サキはためらったのち、 「十枚」  と答えた。 「二十枚はどうだ?」 「十枚」 「分かったよ」  サキの強情そうな顔を見て店主はやれやれと肩をすくめる。  そして、奥へと入っていくと、ペンチのような道具と瓶に入ったオイルを持って戻ってきた。 「ここに座れ」  サキが丸椅子に腰をかけると、店主は翼を乱暴にまさぐって羽根を選びはじめた。サキは拳を握りながら、ぞくぞくする悪寒に必死で耐える。  余計なことを考えると余計な感情まで爆発してしまうから、なるべく何も考えないようにする。  店主が羽根を選ぶと、オイルを布に染みこませ、羽根の付け根に丁寧に塗りこむ。そして、ペンチのような道具でゆっくりと引き抜いていく。  まるで頭のてっぺんから細い串で突き刺されたみたいに衝撃が走る。  鋭い痛みと、這うような鈍い痛みが重なって、身体に穴が空いたような冷ややかな不快感がすうっと通り抜ける。  サキは耐えきれずに肩を震わせた。 「お前さんは相変わらず羽根を抜かれるのが嫌いだな」  店主は次の羽根を探しながら、おかしそうな調子で言った。 「嫌じゃないやつなんて、いないだろ」 「そんなことないぞ。あの黒い羽根の子、あいつはいつも平気なもんだ」 「黒いって、ジールのこと? あんな羽根売れないだろ?」 「そんなことない。珍しいからな。人間には、珍しいものが好きってやつがいっぱいいるんだ」
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