6 ガラクタ屋

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「人間ってやっぱり変だ」 「お前さんたちほどじゃない」 「僕たち?」 「人間も同じってことさ」  サキは眉間にしわをよせて考えてみたけれど、店主の言う意味はよく分からなかった。  痛みから気をまぎらわすために、柱時計の揺れる振り子をじっとながめていた。月と太陽が重なったデザインになっていて、どういう仕組みなのか、一振りするたびに月が欠けたり満ち足りしていた。サファイアのような水色の宝石が埋めこまれていて、揺れるたびきらきらと星のようにまたたいていた。  ぼーん、とどれかの時計がなった。  どれも時間がばらばらなので、いったい、今何時なのかは分からない。 「ほら、済んだぞ」  はっと後ろを振り向くと、店主は抜いた羽根を液体の入った箱の中に沈めていた。素早く数えると、その中には十二枚の羽根が入っていた。 「十枚と言ったのに!」 「まあ怒るな。いつもより金は出す」 「そういう問題じゃない!」 「どうせ、いつも無駄に落としてるじゃないか」 「勝手に抜けるのと、抜かれるのは大違いだ」 「でも、金がなけりゃ、お前さんたちも生きていけないだろ?」  サキは黙るしかなかった。  店主は言った通りいつもより多くの金をサキの手に握らせた。  その重みが心の底にものしかかるようだった。 「お前さんの羽根は良い値がつくんだ。まあ、赤ん坊には劣るがな」  店主は細い唇をにやりとあげた。
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