4人が本棚に入れています
本棚に追加
「今、北で需要が高まってると、ガラクタ屋が言ってた……」
トリンのトパーズの瞳から涙があふれていた。
鳥人の赤ん坊の羽根は透き通るシルクのような純白をしている。それが人間たちの間では、高級素材や装飾品として高値でやりとりされるということは、鳥人たちも知らないわけではなかった。そのために、赤ん坊が盗まれることも決して珍しい話ではなかったのだ。
「サキも手伝って」
サキは暗い顔をする。
どうせ探しても見つからないということは、みんな分かっていることだった。サキの無言をトリンは理解して、さらにしゃくりをあげて涙を流した。
「リラはすごく落ちこんでいるの。自分のせいだって」
リラとは赤ん坊をはじめに見つけた少女だ。
「仕方ないよ。僕たちにはどうしようもないんだから」
「すごくきれいな子だったのに。ピンクのダイヤモンドみたいな……」
「だからだろ」
「あの子はセントラルタワーに置かれてたの。きっと、そのとき、目を、つけられて……」
トリンは泣きながら言葉を続けた。
「私なら、人間のいるところには置かないのに……」
「僕なら」
サキは言葉をためて、
「戻ってこない」
と言った。
トリンは驚いたようにサキの顔を見た。
「鳥人が南から子供を連れて帰ってこなければ、一番良かったんだ」
トリンは罪を怖れるように、口をつぐんだ。
最初のコメントを投稿しよう!