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「お前も気をつけたほうがいい。最近、人間と仲良くしてるんだろ?」
彼女は目の色を変えた。
「でも、悪い人ばかりじゃないし……」
「人間なんて信用できない」
「でも、サキだって――」
「僕は違う。人間なんかと仲良くしない」
語気を強めたサキにトリンは怯えた。
そのまま、うつむいて黙ってしまった彼女を残して、サキは歩きだした。
自然と翼が震えていた。
もう気にならなくなっていたはずの痛みがまたじんじんと痛みだしていた。
手の中の硬貨が重い。
でも、これがなければ生きていくことはできない。そのためには、羽根を売ることぐらいしかできない。でもそれは、羽根を高値で買う人間がいてくれるからだ。南に行けば、そんな煩わしさからも逃れることができるのだろうか?
それとも――
振り向くと、トリンが飛びたっていく背中が見えた。
サキはその姿をいつまでも目で追っていた。
こんな自由な翼があるのに、そのために、自分たちはとても不自由だ。
サキは、そんなことをトリンの姿が見えなくなるまでずっと考えていた。
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