7 命日

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 サキは大きく息を吐き出した。  酸欠になった肺の中に冷たい空気が入ってくる。内側から身体が凍っていくようだった。  夕食の時間が終わる前に温かいスープを飲みに行こう。そう思って後ろを振り返ると、薄暗がりの中に黒い影が立っていた。 「ジール」  不愉快な感情が胸を染める前に、サキはそれを声にして捨てた。とげのある響きを敏感に感じ取ったジールは苦笑いを浮かべていた。 「お前に会いに来たわけじゃないんだから、そんなに嫌そうな顔をするなよ」 「じゃあ、何しに来たんだ」 「墓参りぐらいしてもいいだろ?」  ジールの手には白いカーネーションが握られている。 「今日は命日だしな」 「知ってたのか?」 「当たり前だろ。それに、俺もあそこにいたからな」 「お前が?」 「お前には俺の姿が目に入らないらしいが」  サキはふてくされたように顔を背けた。  セナとは生まれたときからいつも一緒にいたと思っていたけれど、ジールと親しくしていたことなんてちっとも知らなかった。  ジールの言うとおり、サキには彼の姿が見えていなかったのかもしれない。
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