7 命日

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 その背中の黒い翼をあらためて観察してみると、毒々しいまでの黒い光沢は、どこか知らない世界の生き物のようだった。それがむしろ新鮮な驚きをもっているようにも思え、サキは思わず手を触れそうになった。  ジールが花を手向けて立ち上がると、サキははっとして冷や汗をかいた。 「そういえばお前、人間のお友達ができたそうじゃないか」 「は?」 「タワーのエントランスで、人間と仲良くおしゃべりしてたって噂になってたぞ。最近、仲間たちには冷たいらしいが、まさか、本当にあっち側に行くつもりじゃないだろうな?」  ジールはにやにや笑いながらサキを見下ろしていた。 「セナも人間と親しかったからな」 「違う。友達じゃない。つきまとわれただけだ。妙な噂を広めるなよ」 「俺が広めてるわけじゃないさ。でもまあ、俺は別にいいと思うけどね、人間の友達も」 「よければ紹介してやってもいいけど」  ジールは笑った。  それがどういう意味の笑いなのか分からなかったことが、サキをいらだたせた。 「人間は誰もここへは来ない」  サキは再び石碑の前にしゃがみこんだ。無造作に置かれた白いユリとカーネーションが冬の風に寒そうに揺られている。 「一緒に遊んでいた子供たちも、あの日から、まるで汚いものでも見るみたいに――」 「驚いたんだろ」 「人間にはあんな立派な墓地があるのに、鳥人の死を嫌うのか」
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