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セントラルタワーから見下ろした東区の端に、パズルゲームの盤のように整然と石が並んでいる地区が広がっている。あれは何かと訪ねたときに、墓地だと聞かされて驚いた経験があった。鳥人には墓地などなかったからだ。
「嫌うから立派な墓を作るんだろう」
「なんだそれ」
セナが死んで途方にくれていたサキにおせっかいな人間(それが誰かも覚えていないが)に墓をつくったらどうかと勧められた。サキは人間への反発心よりも悲しみに突き動かされて、せっせと墓を建てた。案の定、死者を奉る習慣のない鳥人たちには笑われてしまったけれど、サキは満足した。
「ここに来るのは、僕とお前ぐらいだ」
サキは自虐的な笑いを浮かべながら言った。
墓を作って死者をとどめておくなんて、もしかすると傲慢だったのかもしれない。最近になって、そんなことを急に後悔するようになった。それは、自分の本能が南へと意識をむけるようになったせいかもしれない、とサキは思っていた。
「僕がいなくなったら、お前に墓守をさせてやってもいい」
「どうしたんだ、突然?」
「別に」
風が出てきて、雲がうねっていた。
「でも無理だな。俺だっていつまでもここにいるわけじゃないし」
サキは横目でジールを見た。
ジールは水平線の彼方を見つめているようだった。
「どういう意味だよ?」
「分かるだろ?」
「分からない。お前には無理じゃないか」
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