7 命日

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「なんで、そう言える?」  視線の端で黒い影がちらちらしている。  サキは先ほどの好奇心に満たされた衝動を思い出して、顔をしかめた。 「北には空を飛ぶ乗り物があるんだそうだ」 「空を飛ぶ乗り物?」  ジールは、サキがスバルにした反応とそっくりな調子で言い返した。 「誰でも空を飛べるらしい」 「へえ……」 「それがあればお前も飛べるんじゃないか?」 「ご親切にどうも」  ジールは皮肉交じりに答えたが、サキは聞いていない様子だった。 「人間って変だ。翼もないのに、空を飛ぼうなんて」 「翼がないからだろ?」  サキはその言葉の意味を考えるために、数秒沈黙した。 「なんで?」  しかし、答えは出なかった。 「なんで、翼がないのに飛ぶ必要なんてあるんだよ? 翼があるから飛ばなきゃいけないのに、翼がないなら飛ぶ必要なんてないじゃないか」  サキは独り言のようにつぶやいた。  ジールは困惑したような哀れむような、そして少し笑うような複雑な表情でサキを見下ろしていた。 「お前にとって飛ぶことは義務なのか?」 「義務?」  今度はサキのほうが困惑する番だった。 「無駄なこと考えても仕方ないだろ」  サキはむっとした。 「なんで無駄なんだよ?」 「飛びたいか飛びたくないか、それだけでいいだろ」
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