2 サキとジール

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「……僕は、お前たちとは違うんだ」  苦虫を噛み潰したような声に、ジールは笑った。 「セナが聞いたらなんて言うんだろうな」  サキは無意識に手を振り上げていた。しかし、ジールに手首をつかまれると、唸り声を上げて我に返った。 「セナはもっと喧嘩が上手かったぞ」 「うるさい!」  サキはじたばたとするが、一回り大きいジールの前には、なんの抵抗にもなっていなかった。 「離せよ!」  サキは顔を真っ赤にして叫んだ。  ジールが笑いながら手を離すと、サキの手首は赤く腫れていた。それを忌々しげにさすりながら、彼は怒るように翼を逆立てた。 「なんだ、動くのか」 「なんだって?」 「飛べないんじゃなかったのか?」  ジールはにやにやとサキの翼をながめていた。 「飛びたくないだけだって言ってるだろ」  サキの顔はリンゴのように赤くなっていた。瞳と同じ琥珀色の髪はさわさわと音を立て、怒りのために輝いている。 「むきになるなよ」  ジールは青白い顔で涼しげに言い、両手をあげる。そのしぐさがまた人を小ばかにしているようだ。 「お前はセナと違って短気なんだな」 「セナの名前を気安く呼ぶな」 「なんで?」 「それはお前が」  と言いかけて、サキはまた苦虫を噛み潰したような顔をすると、 「僕は、お前が大嫌いだからだ」  と言い直した。 「知ってるよ。みんな俺のことが嫌いだからな」 「なら、僕に話しかけるな」 「セナには恩があるんだよ」 「恩? なんで、お前とセナが?」
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