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「……僕は、お前たちとは違うんだ」
苦虫を噛み潰したような声に、ジールは笑った。
「セナが聞いたらなんて言うんだろうな」
サキは無意識に手を振り上げていた。しかし、ジールに手首をつかまれると、唸り声を上げて我に返った。
「セナはもっと喧嘩が上手かったぞ」
「うるさい!」
サキはじたばたとするが、一回り大きいジールの前には、なんの抵抗にもなっていなかった。
「離せよ!」
サキは顔を真っ赤にして叫んだ。
ジールが笑いながら手を離すと、サキの手首は赤く腫れていた。それを忌々しげにさすりながら、彼は怒るように翼を逆立てた。
「なんだ、動くのか」
「なんだって?」
「飛べないんじゃなかったのか?」
ジールはにやにやとサキの翼をながめていた。
「飛びたくないだけだって言ってるだろ」
サキの顔はリンゴのように赤くなっていた。瞳と同じ琥珀色の髪はさわさわと音を立て、怒りのために輝いている。
「むきになるなよ」
ジールは青白い顔で涼しげに言い、両手をあげる。そのしぐさがまた人を小ばかにしているようだ。
「お前はセナと違って短気なんだな」
「セナの名前を気安く呼ぶな」
「なんで?」
「それはお前が」
と言いかけて、サキはまた苦虫を噛み潰したような顔をすると、
「僕は、お前が大嫌いだからだ」
と言い直した。
「知ってるよ。みんな俺のことが嫌いだからな」
「なら、僕に話しかけるな」
「セナには恩があるんだよ」
「恩? なんで、お前とセナが?」
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