シェイクスピアなんか大嫌い

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シェイクスピアなんか大嫌い

 「もしもさ、もしも明日地球最後の日だったとしたら、どうする?」  彼女が唐突に質問してきた。  「何。いきなり。」  「だからぁ。もしもの話。」  まぁ、よく聞く『もしも~だったら?』という例え話のひとつではある。  何事も始まりあれば終わりある。永遠じゃない。  「よくあるパニック映画みたいなのはやだなぁー。わーわー騒いで崩壊にまきこまれるのとかゴメンだ。」  「ゴジラとか東京タワーとか、ホワイトハウスとか映画みたいにぶっ壊すとか?てか、そういう話じゃなくってさ。最後の日、んー24時間前とかでもいいや。出来る事だよ。何したい?ってこと。」  「んんー。」  ちょっと考えてみる。  「別に、いつも通り過ごすかな。まぁ仕事とかは放りだして。美味しいご飯食べてお昼寝して、眠っている間に苦しまずに終わってたらいいなぁ。」  いつも通り。まぁよくある回答。何かのアンケートでも一位だった。  「あんたは違うの?あんただったら何。」  彼女は少し黙って、ローテーブルに頬杖をつく。  「そうだなぁ。拡声器でも持って、怯えてる権力者に『ざまぁみろ‼』って叫ぶかな。』  私は面食らった。彼女の言った『ざまぁみろ』が突然の大声だったからだ。  「…過激だな。」  「そお?」  実際には適切な言葉がみつからない。  「何かに書いてあった。悪徳政治家とかさ、どこぞの悪さを隠蔽出来て自分だけは安全だと思ってるお偉いさんは、他人がどうなろうと眉1つ動かないけど、自分の身に危険が及ぶとなったら目の色変えてオロオロするって。そんなみっともなくオロオロする姿中継してほしいもんだなって。」  「…なんか恨みでもあんの」  「そりゃもういーっぱい」  「その政治家に投票したのはあんたじゃないの」  「投票した奴が当選した覚えがない。」  「投票したことあるんだ。意外。」  「私、性悪説の方信じてるから。」  性善説と性悪説か。ひねくれものだなぁ。  「私ひねくれものだから。性悪説が『これから善くなる』って意味もあるってのも聞いたけど、そうかなぁ。人間は学ばない生き物だし、その証拠に戦争も無くならないしね。」    あんたには希望ってもんがないのか。  「希望ってなんだろうね。すっごく(はかな)い言葉。」  (まれ)に望むと書いて希望。頭の悪い自分にはよくわからない。  私の中には二人の子どもが住んでいる。  毎日そうして言い合いをしている。  生きるべきか死ぬべきか。そんなセリフがある小説は何だったっけ。  「べき」なんて言葉きらいだ。「べき」なんていらない。  シェイクスピアなんか大嫌い。
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