「月は確かに泣いていた」

熱のさなかに

　痛みを伴いながらくらげのように漂っている意識。
　どうにか呼吸だけはしている。

　発熱、本日３８℃。い、たい。
　毒親の元に育てば病床でもこんな時でも「おかあさん」とは呟けない。
　体中が痛い。親からも先生と呼ばれるあらゆる人たちから、つい昨日も酷く傷ついた日に引いた筈の熱が再燃。刺された腹部が再び痛む。鎮痛剤が効かない。

　「先生」と呼ばれる人種が嫌いだ。
　その権力を使って虐げられる事が重なり過ぎるとそうなるのは自明の理。

　先生となぜ呼ぶのかというテーマの小さなコラムを見つけた事を思い出す。

　仮説①医師などが命の明暗を握っているから
　仮説⓶読んで字のごとく、先に生きている存在だから

　①の仮設なら、医師だけでなくタクシーや電車やバスの運転手も先生と呼ばれてしかるべきだが、大抵医師以外はそうは呼ばれない。

　⓶の場合なら、今の世の中は暴走老人だろうがなんだろうが、周りをみわたせばそこら中が先生だらけの高齢者社会。なら犯罪者もみんな先生なのか。高齢者なら皆先生って密度すげぇな。
　教師や作家がよくわからない。前者にも言葉の暴力や体罰だのって暴力を受けた事もあったっけなぁ。
　そいやどっかの国では教師は老師って書くんだっけ？若くても「老」がつく。なんかウケるー。

　一番先生と呼ぶ意味がわからないのは政治家だ。専制政治とかけてんのか？んなワケないし。

　「○○でございます。ありがとうございます。○○でございます。皆様…」
　選挙の街宣車がうるさい。なーにがありがとうございますだ。
　ウグイス嬢ってバイトかなーバイト代いいのかなー。
　本当のウグイスの方がα波出てると思うんだけど。

　何の手違いか投票はがきも送って来やしない。
　近くに病院も学校も、そしてこの家の一部屋にも寝込んでる奴がいるのに選挙カー、住宅街にまで来るなっつーの。もう八時だぞ。
　知らん電話番号からじゃんじゃん電話はくるしブロック。
　名前連呼しやがって。絶対あの人には投票しない。

　てか何デジベルだよ。公害レベルだ。
　あ、隣の赤ちゃん泣いてる。幼児虐待で通報すっぞ。
　とか心の中で毒づいてみる。
　投票ねぇ。誰にしようか。

　傷みを抱えながら、文句ばっかり言ってるなぁと思う自分。
　いや、文句「しか」言ってない気がする。
　熱のせいだ。
　って、それも文句じゃねぇか。こんな自分が一番嫌だ。