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保証された結婚
「意思表示ウィンドウにも、身体的にも特に問題はありませんね。最近結婚したばかりでしたら、しばらく様子を見られてはいかがですか」
「……わかりました」
結局病院に行った。自分で自分が嫌になるけど、健吾さんの言う通り、彼を受け入れられないのは私に問題があるとしか思えない。
病院を出ると、卵を横にしたフォルムのタクシーが音もなくドアを開けた。座席に座り、「家に帰る」と呟くとなめらかに進みだし、車体は時折浮いたりしながら見慣れた景色をなぞっていった。
昔はタクシーに運転手がいたらしい。すさんだ気持ちの時に他人とやりとりするなんて考えられない。私はこの静寂が好きだけど、このタクシー使用代も健吾さんに請求されるのだと思うと肩身が狭かった。
5年前、「MOTHERシステム」が全国一斉実装されてから私たちの生活は一変した。
私たちの遺伝子情報、育った環境から好きな食べ物までありとあらゆる情報をスキャニングすることで、最適な人生に導いてもらえるシステム。
スキャニングに抵抗した人たちもいたが、その成果が出てくるようになり、当初からすると反対の声はずいぶん小さくなっている。
国家のためになる国民の人生づくり、が「MOTHER」が作られた目的だ。
そもそものきっかけは、大昔に「同性婚なんて国の利益を生まない無駄な結婚だ、皆異性と結婚して子供を残すべき」という大臣がいて、それに反発した天才科学者が「同性婚も異性婚も、なんなら独身でも最大限の成果を残して幸せな人生を送れるように」作り出したらしい。歴史のプログラムで学んだ。
興味を持って検索すると、科学者は国家のためというより「国家に文句を言わせないくらいの人生補助プログラムを作ってやるよ」とつぶやいていたらしく、私は好感を持った。国家のためと言いつつ、誰にも文句を言われない個人の幸せを模索したんだ。
18歳までの基礎教育が終わったら適正職業の中から仕事を選んで家を出る。今の世代は一人につき1台、生まれた時から家事ロボが与えられるので一人暮らしも問題ない。
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