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真実の愛
「いやぁ、こういうこともあるもんだねー!」
神崎さんが笑う。
私はウェディングドレス姿で神崎さんに微笑む。
バー「黒猫のタンゴ」のマスターの本名が神崎だと知ったのは、事件のすぐ後。騒動を聞いてわざわざ「あの時保護すべきだった」と謝罪に来てくれて、自宅にいたくないと漏らした私をバーの上にある自宅に住まわせてくれた。
私はなんだかんだあって今、本当の運命の相手と記念写真を撮っている。
神崎さんが趣味でカメラ(しかもこのご時世にアナログカメラだ)をやっているというので、ウェディングフォトをお願いしたのだ。
両脇にはあの青年と長身の美女――祐一さんと春蘭さんが白いタキシードとチャイナドレスで私の手を取っている。
私の家事ロボは、頼まれてもいないのに動画を残しているみたい。幸せだ。
私が運命の相手と思っていたのは、通称「青ひげ」と呼ばれる犯罪者だった。既に3人が殺され私が4人目の標的だったらしい。
政府の高官という立場を利用し、好みの容姿の女性の情報を集め、襲い、殺していた。
去年意思表示ウィンドウがアップデートされたことで襲うのが難しくなり、今回は運命の相手を装い、時間をかけてセキュリティ解除し襲う予定だったと供述しているらしい。
なにが運命の相手だ、と「MOTHER」システムをも呪いそうになっていた私の前に、本来の運命の相手が現れた。
「僕たち、ずっと3人目の運命の相手を探していたんだ」
2人の警察官が、花束を持って。
そう、「Na:Code制度」で正しく導き出されたのはあの夜助けに来てくれた2人。
ソロより、異性婚よりレアな「複数婚」。
それが私の、運命の結婚の形だった。
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