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場所は全部都内で藤田が話を通してくれていたから、各所での除霊は直ぐに終わった。
最初の時と同じ、涙牙で捕まえて写す。それだけだ。
凶暴であっても、昨日今日悪霊になった霊が、1000年以上前から怨霊をやっている涙牙に敵う訳が無かった。
ちなみに涙牙は怨霊であるが、銀太の命と融合してる為か、一緒に写されても捕らえられる事は無い。
とはいえ、一件の除霊は早いが、計5箇所で距離も離れているので、全部終わる頃には日が変わる少し前になっていた。
「さすがに疲れたなぁ」
銀太は事務所の応接用のローテーブルに、コンビニ袋を置きながら言う。
中身は弁当、他だ。
「せやな。でも、今日中に終わって良かったやんけ」
と士鶴も同じくコンビニの袋をローテブルに置きながら言う。中身は同じようなもんだ。
2人は応接用のソファーに向かい合い腰掛けて、弁当を食べながら今日の事を話した。
「場所は、無人の事故物件が4件と1件の廃屋。都内だけど、23区外の場所もある。一番遠い場所は青梅市の端っこの廃屋だ」
「繋がりはあるんかの? 離れすぎとるやろ? 最初にお前が除霊した場所を含めると6件やが、場所が離れ過ぎとる。その6件を結ぶ間にも霊が居ついてる場所が絶対にあるやろ? そいつらは、平常運転や。何か大きな力に引っ張られたなら、おかしいやろ?」
「飯喰ったら、藤田さんに借りた資料を見てみる。そこに霊が居つくようになった背景まで書かれているから、何か分かるだろ。藤田さんにも除霊が無事終わった事をLINEしとかなきゃな?」
「なあ、悪霊化してた霊はみんな子供やったな?」
「ああ、子供の霊は無邪気な分、変化を受け易いってのはあるだろ。後、悪意が無くても、結果的に人を攻撃にしちまう事もある」
「せやなぁ。だが、ワイにはあいつらが、敵意で攻撃してるだけには見えんかった。何かに怯えてるように見えたわ」
「……。」
銀太は弁当を喰ってる手を止めた。
「お前もそう感じたんやろ? 手負いの猫みたいな暴れ方や。最初は怯えて隠れてるけど、必要以上に近付いてまうと、攻撃に転じて来る。自分を見えてる人間に怯えとるようやった。ワイらが見える事を、気付いとるようやった」
士鶴は生まれながらに霊力がある。だから、銀太と違い肉眼で、霊を見る事が出来た。
「確かに俺が最初に除霊した部屋も、1回警察が捜査で入ってるが、その時は何も無かったみたいだ。何かあったなんて話は聞いてない。警察には見える奴が居なかったのかも知れない? 現場では無いから、そこまでの調査は無いだろうけどな。ただ、お婆さんは襲われてる」
「婆ちゃんかぁ……。」
「とにかく、早く飯食って資料を見よう。俺はこんな除霊をもうしたく無い。元々は何の敵意もない霊達だったんだろ? しかも子供だ」
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