3 結末

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 健治くんはひどく傷ついた顔をしたけれど、抵抗をしなかった。調子に乗って、きっと誰に汚されたこともないのだろう下半身に顔を埋めた。 「大丈夫。俺、はじめてじゃなかとやけん」 「怜央、僕は……」 「見ててよ。お前が見捨てたガキがさ、こんなきたねぇ生き物に育ったんを、しっかり、その目で」  ああ、見えないんだった。どうでもいい。  名前も知らない男に無理矢理されたときのことをどうにか思い出しながら、健治くんの雄を暴いていく。アンタは天使やまして聖人なんかじゃない。欲にまみれた人間だ。だから俺を見捨てるなんてことができる。分からせてやるために、わざと汚らしく喘いでやった。 「ね……コレ、なんでおっ勃てとん、のっ。ほんと、は、ガキの頃の俺にも、あっ、こういうこと、したかった、わけっ」  下腹に力を込めてギュッと締め上げてやれば、う、と呻いて健治くんが吐精したのが分かった。俺はまだ達していない、まだ許すものか。健治くんの肩をソファに押し付けるが、逆に白い両腕が伸びてきてぎょっとした。  動けずにいる俺の顔を、健治くんの両手がくるむ。昔と同じ。世界で一番好きだった大きくてあたたかい手。苦悶に満ちた顔を更に歪ませて、健治くんは「ごめんね」と囁いた。 「きみを救えなかった。こんな風にしてしまった。僕はきみの手を離すべきではなかったのに」 「っ……そうだよ」 「今からでも、きみを守りたい。どうすればいい。どうすればきみを救える?」  くらりとした。この期に及んで、何を言っているんだ? 「今僕が持っているものを全て捨てればいいのか? きみだけのために生きればいい? 僕の残りの人生を全てあげるから、どうか、きみに幸せになってほし……ッ」 「黙れよ」  細く、白い喉を両手で掴む。これ以上哀れみの言葉をかけられたくなかった。  幸せにだって?  そんな道は残されていないんだ。  そちらに続く分岐路は、八年前に断たれてしまったのだから。 「残りの人生くれるって言うなら、今全部くれよ!」  ぐ、と指先に力を込める。健治くんはその手を外そうともがくでもなく、俺を引き剥がそうとするでもなく、俺の顔を包み込んだまま深く引き寄せた。小さい子どもを抱き締めるかのようなその動きに目眩がした。 「ごめ……ね……」 「許さない、許さねえ! 助けてくれんなら最初から手を出さなきゃよかったんだ、結局俺んこと見捨てたくせに! アンタにまで捨てられたから、俺は、世界の何も信じられなく……クソっ、クソぉ!」 「ご……め……」 「黙れよ!」  俺は泣いていた。  泣きながら、健治くんの呼吸を奪い、断った。  世界で一番大好きだった手が力を失い、頬、顎、首をつたって、ぱたりと落ちた。
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