ブドウの味は分からない

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ーカランコロン♪ 「いらっしゃ…」 「マスター聞いてー! 私結婚するのー!」 扉が開くやいなや、ヒールの音を響かせて彼女が入ってきた。 キラキラと満面の笑みで、目尻のキュッと上がった目が糸のように細くなっている。 「それは…オメデトウゴザイマス」 「リアクション薄っ!棒読みだし! 常連客に対してひどくない⁈」 「いやまあ…このくだり5回目ですからねぇ…。 また1~2週間後に「別れたのー!」と店にやってくる未来が容易に想像できてしまって…」 「違うの!今回は本当なの!5回目の正直!」 「…多すぎです。本来は3回までなんですよ?」 「も~マスター厳しい!とりあえずいつもので!」 「…かしこまりました」 カクテルグラスと、カウンターに並んだボトルの1本を手に取った。
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