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20、許すとか許さないとかじゃないです
連絡をしてから来た方が良かったのかもしれないけど、何て連絡をしたらいいのか分からなかったし、勢いで慧の部屋の前まで来てしまった。
まだ20時だし、バイト中かな。
いるかどうかは分からないけど、とりあえずチャイムを鳴らしてみる。
しばらくして出てきた慧はずっと部屋にいたのかラフな格好をしていたけど、私と目が合うと、わずかに目を見開く。
「いきなり来てごめんね。少し話したいんだけど、今時間ある?」
「……とりあえず入ってください」
突然私が来たことには慧も驚いていたみたいだったけど、それでもすぐにドアを開けて家の中に入れてくれた。
*
部屋の中に私を入れてくれた慧は、私がクリスマスにあげたペアの猫ちゃんマグカップに入れて温かいお茶を出してくれた。何も会話もないままお茶を飲んでいたけど、ふいに立ち上がった慧が何かを持って戻ってくる。
「これ、半年記念のプレゼントです。もう記念日過ぎたけど、一応用意してたので」
テーブルに置かれた小さな包みを呆然と見ていたけど、そっか。二月で慧と付き合って半年なんだ。考えることが多すぎてそこまで気が回らなかったけど、慧は覚えててくれてたんだね。
「まだ私と付き合う気があったんだね」
「そんなに俺と別れたいんですか?」
「そうじゃないけど。返信してくれなかったし、慧はもう終わらせたいのかなって思ってた」
「いや、逆にあれに何を返せと。楽しんできてくださいねとでも送ればよかったんですか」
男の子と二人でご飯行ったりする時は事前に連絡してって言われたからしたんだけど、距離を置いてる状態であんなこと送ってもたしかに返しようがないかもしれないね。しかも、相手が恩田先輩だし……。
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